ちょびっと言語学💡

スペイン語の”h”の謎を紐解いてみよう!

¡Hola a todos!  改めまして、emeと申します。

 第1本目の記事でいきなりこんなディープな内容を取り扱って大丈夫なのか?と心底不安ではありますが、今日は個人的な魅惑の文字(la letra seductiva)であるスペイン語の”h”(hache)について解説します。スペイン語文法の話です。

 スペイン語始めたての人にも、スペイン語の勉強にもっと精を出していきたいという人にも分かりやすくまとめるように心がけますので読んでいただけると幸いです。では、よろしくお願いします!

“h”の概要

 スペイン語において、”h”はたいていの場合発音しないということをご存じの方も多いでしょう。

 「”h”は無音になる」というその特徴ゆえに省略されうる文字ですが、スペイン語の統率機関であるRAE(Real Academia Española)が行った正書法再編によって、現在では多くの場合、語源や伝統を鑑みて正書法的に付け加えることが正しいとされています。次の章から、”h”についてより詳しく解説します。

RAE(マドリードのトレド美術館の横にあります)

パターン①:ラテン語の”h”がそのまま継承

 起源は俗ラテン語に遡ります。

 当時”h”は有気音(ハ行の音)を表すために使われていました。[habere :(haber)など]

 その後、口語(話し言葉)ではすぐに使われなくなってしまうのですが、文語(書き言葉)では引き続き使われていくことになります。スペイン語単語の”h”は対応するラテン語単語に起源を持つケースが多いのです。

 スペイン語では”h”を音声として発音する性格を欠いていることは先ほど確認しましたね?

 それ故に中世スペインでは書き言葉でも”h”を省略する習慣が広まっていきました。

例を挙げると、、、

 ombre —→ hombre (男)

 ora —→ hora (時間)

 avía ——→ había (haberの線過去)

などです。

 しかし、13世紀半ば(特に15世紀からは顕著)から、ルネッサンス(renacimiento)の広まりに由来するラテン語化風潮に伴って”h”は再び記載されていくことになります。

これが第1のパターンです。

パターン②:”f”と”h”の関係性

 バスク語の影響もあり、語頭が”f”でその次に母音が続くラテン語の単語は中世スペイン語では有気音として発音されていたそうです。つまり、16世紀までは“f”の音として表現されていた文字も、その後は“h”の音として使われることがあったとのことです。

例えば、

ferrum —→ hierro (鉄) ※ferrocarril (鉄道)は鉄に関連する単語ですが、語源寄りで”f”を使ってますね(笑)

farina —-→ harina (小麦粉)

ficus —–→ higo (イチジク)

などです。

 これが第2のパターンです。だんだん興味が湧いてきましたか??

パターン③:RAEが”h”を意図的に付け加えた

 3つ目に紹介するのは、語源的には”h”をつけることが予想外になってしまうパターンです。

germanus —→ hermano (兄弟)

inflare ——-→ hinchar (ふくらます)

ossum (俗ラテン語) —→ hueso (骨)

ovum ——————-→ huevo(卵)

などです。

 ※をつけた後ろ2つの単語については歴史的な理由で裏付けが可能なようです。

音節の最初がue/ua/uiの二重母音になる単語の大半は”h”を伴っていたということが解明されています。

というのも、歴史的に、uとvは母音(/u/),子音(/b/)を表現する際区別せずに使われていたそうです。

 例えば、高級ファッションブランドのブルガリ(BVLGARI)は、「ブ」ルガリというように母音”u”の音で発音してるのにも関わらず、表記の際は B[V]LGARIと子音字vを使ってますよね。

 現在でもその影響を残していると考えると面白いものがあります。

 (参考までにリンク貼っときます!) ブルガリ公式オンラインショップ | Bvlgari (bulgari.com)

 この区別をニュアンス的にはっきりさせるため、母音的性格を目立たせるために”h”が付け加えられたのです。“ueso”と書いていると、先ほど説明した“u”と”v”の混同から[béso](ベソ)と発音されてもおかしくないわけですね。

 しかし、”h”を付け加えて、”hueso”にするとどうでしょう。[uéso](ウエソ)と呼んでもらう他無くなりますね。これで問題解消というわけです。すごい。

 だから、二重母音を伴わない”hueso”関連のワードファミリーには”h”が伴わないわけですね~。

óseo-a ([形]骨の)

osario (納骨堂)

osteporosis (骨粗しょう症)

 でも、huesoは[ue]の二重母音なので”v”との混同を避けるために”h”が伴うことになったと。

 とても興味深いですね :) ついでに、今紹介した骨系の単語も一緒に覚えちゃいましょうね!

語源って奥が深いなぁ。。

まとめと参考文献

今回の参考文献はこちらです!(章タイトル) “LA HACHE, UNA LETRA DISCRETA”

https://amzn.to/3Q3PG84

 

こんな感じで今後も密度の濃い記事を週3本ペースで投稿できたらと考えています。

コメント感想等お待ちしております 🙂

— eme —.

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